Report KOSUGE1-16 「どんどこ!巨大紙相撲 星美場所」

子どもたちが作った行司の衣装   Photo by Yukiko Koshima

dear Meでは、高知県在住の美術家ユニットKOSUGE1-16により全国各地で行われている『どんどこ!巨大紙相撲』 ワークショップを星美ホームで行いました。今回、ポスターを見て集まってくれた小学生たちが参加し、熱気あふれるイベントになりました。

 人と人の程よい越境。「持ちつ、持たれつ」の精神から

dear Meでは、美術家ユニット「KOSUGE1-16(こすげいちのじゅうろく)」の土谷享さんを招いたワークショップを行いました。

ユニット名の名前の由来は、1998年に東京の下町、葛飾区小菅に土谷さんご家族が引越しをして住んでいた時のエピソードに繋がります。周りは、戦後を生き抜いた世代が多く住んでいました。

その頃、近くにあった東京拘置所が建て替えのために取り壊され、ねずみが大量に小菅1丁目の地域に逃げ出しました。ねずみの大発生に住民はパニックに。そして、どうしたら良いかを地域住民みんなで知恵を出して互いに助け合い、「猫を飼うのがいい」ということで、その頃多くの家が猫を飼い始めたと言います。
他にも、お団子や夕ごはんのおすそ分けがご近所同士で回ってきたり、ある時は、食べかけのポテトチップスの袋が、家の郵便受けに入っていて驚いていたら、近所のおばあさんが一人で食べきれなかったものだったという、なんだか微笑ましい話も。

小菅に暮らしていた時、こうした近隣住民の“程よい越境”のエピソードが多くあったそう。かつての日本では当たり前のようにあったこうした地域のつながりは、今ではあまりなくなってしまったと言われています。土谷さんは、その時に体験した人と人の「持ちつ持たれつ」の精神に感銘を受け、そうした繋がりを大切にしていきたい、という想いから、アーティスト名に地名を取り入れ、活動を続けています。

迫力満点の「どんどこ!巨大紙相撲」

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どんどこ!巨大紙相撲の説明をするKOSUGE1-16さん  Photo by Yukiko Koshima

「どんどこ!巨大紙相撲」はKOSUGE1-16が全国各地で開催している、その名の通り身長180cmもの巨大な力士をダンボールで切り出し、土俵の上を叩いてたたかうイベント。大相撲の基本的なルールをもとに、参加する誰もが参加したい役割で参加できるよう、程よい距離感で関わりを持てるユニークな工夫を随所に取り入れています。

今回、小学生の子どもたちとサポーターの大人たちが参加しました。
はじめに、土谷さんから子どもたちに相撲の仕組みや役割を説明し、チームに分かれて巨大な力士をダンボールから切り出しました。例えば、サポーターとして力士を支える「谷町」の存在や、力士のカツラをつくる「床山さん」など。大相撲はたくさんの人に支えられての一大イベントということを子どもたちに説明しました。

説明が終わったら、早速チームに分かれて、それぞれの力士作りに取り掛かります。かつて星美ホームを訪れたことのあるマイケル・ジャクソンや小錦を元にした力士をはじめ、スズメの「チュン関」やパンダの「シャンシャン関」など、子どもたちが色々なキャラクターを考えて、オリジナルの力士を力を合わせて作り上げました。

土谷さん曰く、大きいからといって必ずしも強いわけではなく、腕や足の角度や太さ、色々な要素や対戦相手の相性などで、力士の勝敗は戦ってみるまでわからないそう。子どもたちは自分のチームの力士にこだわりを持って、それぞれ持ち時間ギリギリまで制作に夢中になりました。

いよいよ試合。子どもも大人も、どんどこ!どんどこ!

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はっけよい!のこった!  Photo by Yukiko Koshima

力士が完成するといよいよトーナメントのはじまりです。力士が土俵に上がり、取り組みが始まると、土俵を叩いて子どもも大人も大興奮!歓声とともに際どい試合が続き、大人の行司(審判)と子どもの行司が集まってとことん話し合う、「物言い」の時間が何度も見られました。

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子ども行司も白熱した、物言いの様子  Photo by Yukiko Koshima

力士づくりではそれぞれのチームで個性豊かな飾り付けや色ぬりを行い、そのほか、作りたい子は力士のかつらや行司の衣装、自分のチームののぼり旗を作るなど、参加したみんながいろいろな関わり方で取り組みを盛り上げ、最後にはお互いがライバルでありながら応援し合う熱気あふれるイベントとなりました。

子どもたちがつくった力士たち

スタッフあとがき

当日、朝から土谷さんと一緒に土俵のベニヤ板を電動ドリルを使って組み立てていると、その音に興味を示した小学生の男子たちがやってきて、「手伝わせて!」と、板を支える子や機械の使い方を習いながら組み立ててくれる子たちがいました。また、ワークショップ後の片付けも最後まで子どもたち自ら、ほうきとチリトリを手に、もう大丈夫だよ、と言っても最後まで手伝ってくれた、たくさんの勇敢な子どもたちがいました。
子どもと大人が全力でぶつかり合って、みんないい表情をしていたのが印象的でした。

AIT スタッフ

 土谷さんと一緒に土俵を組み立てている途中に子どもたち数名が集まってきて、ボルトを締める作業などを手伝ってくれたのが可愛くて、こういったちょっとした作業を手伝うことも、子どもには良い経験になるし、本番でも盛り上がれるのかなと感じました。
 力士作りでは小学生女子3人の班のサポートで、リラックマ関を制作。途中、リラックマの色の大部分を占める茶色のポスカ(水性インク)がほとんどないことが発覚。私はすぐに他の色で塗ることを提案しましたが、子どもたちはどうしてもこの茶色でなければならないといいます。ポスカを何度も振って、絞り出た少量のインクを手で伸ばして塗っていきました。「水持ってきて!」「このインクを伸ばして!」子どもたちがどんどん思いついたアイディアで大人にも指示を出していたのも心強かったです。最終的には全体を塗り潰すことは出来ませんでしたが、子どもたちの諦めない姿勢と熱意には心を動かされました。
今まで何回かdear Meワークショップに参加しましたが、これまで以上に時間が短く感じたのは、子どもたちがイベントに集中しているからだと感じました。

サポートスタッフ
プロフィール
  • 土谷 享(美術家ユニット KOSUGE1-16)
    土谷 享と車田 智志乃による美術家ユニット(2001年~)。アートが身近な場所で生活を豊かにしていく存 在となることを目的に、参加型の作品を通して、参加者同士あるいは作品と参加者の間に「もちつもたれつ」という関係をつくりだす活動を行っている。近年の主なプロジェクトとして、「みんなのきりこメリーゴーラウンド」(南三陸町 荒島パーク、2019)、「モチΩスクランブル」(高知県立美術館、2018)、「そーまのたらい展」(九州芸文館、2017)、「アッペトッペ=オガル・カタカナシ記念公園」(せんだいメディアテーク アートノー ドプロジェクト、2016~)、主な個展に「THE PLAYMAKERS」(mac birmingham、2012)、主なグループ展に「プレイヤーズ 遊びからはじまるアート展」(アーツ前橋、2014)、「こどものにわ」(東京都現代美術館、2010)、「あいちトリエンナーレ2010」、主なワークショッププログラムに「どんどこ!巨大紙相撲」 (日本各地、2006年~)などがある。http://kosuge1-16.com