Report Learning lab 05|ゲスト 滝沢達史さん ⼦どもも⼤⼈も『家出』しよう! アーティスト、⼦ども、さまざまな当事者とアートの有⽤性

(C) 滝沢達史 カマクラ図工室
(C) 滝沢達史 カマクラ図工室

特別支援学校で知的障害児への美術教育に関わった経験も持つアーティストの滝沢達史氏をお招きし、子どもたちや当事者と豊かに関わりながらアート活動へと昇華させ、オルタナティヴな「学校」をつくるプロセスについてお聞きしました。

さまざまな環境下にある子どもや若者が、アーティストとの出会いを通じて世界のひろがりや他者との繋がりを発見するきっかけをつくるdear Meプロジェクトでは、これまでに児童養護施設や美術館、AITルームなどで鑑賞プログラムやアーティストを招聘したワークショップ、アートと福祉を考える講座などを実施してきました。

こうしたプログラムと並行して、児童養護施設の職員や美術館の教育普及を担当する学芸員など、アートと児童福祉に関わる専門家とのコミュニケーションと意見交換の場として「勉強会」を実施し、子どもの自立支援の課題や教育的なプロジェクトを行うアーティストから学ぶ機会を設けてきました。これは、プログラムを行う私たち自身が子どもと社会の仲介者として経験を共有し、それぞれの活動への豊かなフィードバックを得る事を目的としています。

2月18日に行われた勉強会では、特別支援学校で知的障害児への美術教育に関わった経験も持つアーティストの滝沢達史さんをお招きしました。

滝沢達史さんは近年、群馬県のアーツ前橋で開催された『表現の森』を契機に始まったひきこもり・不登校の当事者団体「アリスの森」との長期的なプロジェクトを始め、自身が運営に関わる、子どもの表現活動や学校でできない学びを探求するカマクラ図工室 、岡山県で障害を持っていたり、学習の援助を必要とする子どもたちの学び場を創出する「ホハル」の活動など、子どもや当事者の主体性を育むプロジェクトに取り組んでいます。

その背景にあるのは、自身が教育制度に抱いた違和感や批評的な眼差しであると言えます。当日は、そうした思考を軸に、子どもたちや当事者と関わりを豊かにしながらアート活動へと昇華させ、オルタナティヴな「学校」をつくるアプローチやプロセスについてお聞きしました。

参加者には、児童福祉施設の職員、アーティストとして幼児教育に携わる方、4月から大学で美術を教えるというアーティスト他、美術館関係者等が参加し、滝沢さんの眼差し や活動をヒントに、それぞれの考える理想の学びの場や、こうした活動をいかに広めていくかのアプ ローチの難しさや方法について意見交換を行いました。

プロフィール
  • 滝沢 達史(美術家)
    1972年生まれ。多摩美術大学油画専攻卒業。東京都知的障害養護学校にて美術教育に従事したのち退職。2009年、幼少期を過ごした津南町にて越後妻有トリエンナーレに参加。以後国内のアートプロジェクトにて多数作品を発表。場の背景を主題とし、様々な表現手法で作品を展開している。これまでの主な活動として、ひきこもり・不登校の若者たちとの協働による作品展示(表現の森/アーツ前橋)や、椅子を背負って霊山に登り土間に埋める行為(福島県喜多方市)、島の遺物を収め続ける博物館「粟島研究所」(瀬戸内国際芸術祭)など、多岐にわたる表現活動を行っている。また、子どもの主体性に任せた表現活動「カマクラ図工室」にも取り組むほか、2018年4月、放課後等デイサービス「ホハル」を立ち上げ、障害のある人もない人もともに居られる社会を目指す。
    放課後等デイサービス「ホハル」
    「カマクラ図工室」山と海
    はみだし部品インタビュー
  • dear Me プロジェクトとは
    NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ [ AIT/ エイト] と日本財団(2016-2018)による、子どもとアーティストが出会い、共に表現をする機会の創出や、アート/表現を通じた自由な学びと未知のものに出合う空間(場)づくりを通して社会を捉え直すプロジェクト。子どもの福祉施設ほか、さまざまな環境下にある子どもや若者、大人の伴走者に向けた、対話型の鑑賞ワークショップや国内外のアーティストによるワークショップを実施するほか、共に学ぶレクチャーやシンポジウム、イベントを企画。現代アートの多様な表現や対話をつうじて様々な価値観に触れ、世界のひろがりや他者との繋がりを発見するきっかけを創ります。
  • NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]とは
    現代アートと視覚文化を考えるための場作りを目的として、2001年に設立したNPO団体です(2002年法人化)。 個人や企業、財団あるいは行政と連携しながら、現代アートの複雑さや多様さ、驚きや楽しみを伝え、それらの背景にある文化について話し合う場を、さまざまなプログラムをとおして創り出しています。
    http://www.a-i-t.net/ja/