Report 瞑想とアンビエント音楽のワークショップ 横須賀拓さんによるファシリテーターレポート

「マーク・トゥー・ザ・ミュージック」にてファシリテーターを務めた、デザイナーであり、アトリエ・エー初期からスタッフとして関わる横須賀 拓さんによる、ミニレポートをお届けします。


音楽と精神のインスピレーション・ワークショップ

事前に概要を聞いたときには、まず最初にライブがあって一通り音楽を聞いてからその後に絵を描くのかなと想像していた。どんなふうに子どもたちに音楽が影響されるのだろうか、ふだんのアトリエとどう違うのか、始まるまではまったくイメージ出来ていなかった。

まずは瞑想の時間から。ヨレインさんの指示に従い、目をつむり、静かな時が流れる。微かに聞こえてくる音たちが、次第にリズムを取りはじめ、音楽(のようなもの)へと変化する。それに合わせて子どもたちが体を揺らしはじめているのを見て、気持ちが乗りはじめているのだと感じた。

そして横になって眠りの姿勢になる子まで現れ、あっという間に究極のリラックス空間が出来上がっていった。教室でやるアトリエとはまったく違うものが始まるんだと、そのときになってようやく今日のコンセプトを理解したのだった。


瞑想の時間から絵の時間へ

ふだんアトリエでもサポートすることの多いしゅん君に付くことに。アクリル絵の具をじっと見つめているので「絵の具使ってみる?」と声をかけると「うん」と頷いた。ふだんはペンで描く独特の線画が絵の具になるとどうなるのかなと思いながら準備をする。

まず最初に青を選んだ。ゴシゴシと筆を擦り続け、紙の上に青い色の塊が浮かんでくる。

筆に慣れていないせいなのか、絵の具がなくなって筆がパサパサになってもずっと同じ塊に向かって擦り続けるので「絵の具足してみようか?」と尋ねても反応がない。

絵の具は難しかったかなと思い「ペンで描いてみる?」と聞くと「うん」と頷いたので、絵の具からペンに変更することにした。


ゴシゴシの理由

Photo by Isamu Sakamoto

紫色のペンをとり、また紙に向かってゴシゴシと擦り続ける。いつもの線画とは違うんだなと思いながら見守る。しばらく経って「色変えてみる?」と聞くと「うん」と頷く。次は黄色、次は赤というように順に色を変えても、やはり変わらずゴシゴシと擦り続ける。これまでとは描くスタイルが違うので、不思議に感じていた。

Photo by Taku Yokosuka

これは後になって分かることなのだけど、しゅん君が帰る際にお母さんから「しゅんすけはすごく音楽が好きで、いつも家で聴いてるんです。こうやって体を揺らして。大好きなんです」と。

そういえば、今日はいつもより体を揺らしていたようにも思える。つまりしゅん君は音楽に乗って絵を描いていたということだったのかと、そこで初めて気がついた。

だったらもう少しアクリルの絵の具を続けておくべきだったなぁとひとり反省。でもしゅん君の新たな一面が見られたことや、完成した絵からはしゅん君の耳に届いた音(音楽)が感じられて、それはそれでとてもうれしい。
次会ったとき「音楽楽しかったね」と、言葉を交わしたい。

テキスト:横須賀 拓(デザイナー/アトリエ・エースタッフ) 

プロフィール
  • 横須賀 拓
    グラフィック・デザイナー。書籍などを中心に活動。アトリエ・エーには立ち上げ当初からスタッフとして関わる。