Column | オランダリサーチ ミニコラム ゴッホ美術館訪問

2023年7月に、AITスタッフがオランダを訪問し、芸術、福祉の領域でアートとメンタルヘルスの実践を行う美術館や福祉団体、アートスペースを訪問しました。このミニコラムでは、スタッフがリサーチした、ゴッホ美術館のヤングアダルト向けプログラムについて報告します。

ゴッホ美術館のヤングアダルト向けプログラム

ゴッホ美術館は言わずと知れずオランダで最も良く知られた美術館の一つであり、毎年100万人以上が訪れる観光スポットである。一方で、近年のゴッホ美術館の課題の一つとして、観光客が多く訪れるあまり、地域の人々、特にその中でも中高生などの若者が美術館に訪れる機会が減少している点があげられる。

近年、美術館では、アムステルダム市からの要請を受けて、より若者が訪れやすいイベントを行っているほか、若者たちがメンタルヘルスについて考えるプログラムを実施している。そのいくつかについて、エデュケーション担当の方にお話しをお聞きした。


 ヴィンセント・オン・フライデー

この試みは、特に地域の若者が参加しやすいプログラムとして開発された。ここでは、展覧会を鑑賞するだけではなく、美術館のオープンスペースを活用し、金曜日の夜に、若者がローラーブレードやダンスをしたり、ライヴパフォーマンスや音楽イベントなどを楽しめる工夫を行うことで「居場所」を創出している。

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 オープン・アップ・ウィズ・ヴィンセント

美術館がヘルスケアの専門家や、ミュージアム・オブ・マインドとも協働し、ゴッホが抱えていた精神的な不安や物語を知ることで、自身の体験や不安を安心して語り合える場を創出している。ここでは、参加者がヨガや瞑想を体験しながら落ち着いて話せる工夫が行われているほか、美術館内でのプログラムに限らず、学校などに訪問するアウトリーチプログラムなども行っている。
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これらは、ゴッホ美術館のスタッフやミュージアム・オブ・マインドのメンタルヘルス・コーディネーターのヨレイン・ポスティムス氏が若者と対話を重ね、彼らが何を美術館に求めているのか、どのようにすれば美術館は彼らにとって声をあげやすい場にできるかなどについてヒアリングした上で立ち上げられている。

これまでも、ゴッホが抱えていた精神的な困難は史実として語られてきたが、一方で作品の評価がそこのみに集約されないような展示の工夫も美術館としては意識したいのではないかという葛藤も想像できる。
その上で、より多様な鑑賞者に作品を開いていこうとする時、美術館においても、今後、これまでのキュレーターの肩書きに加えて、ヘルスケアと芸術の両領域の専門家のほか、これまでに無い役職が求められているのではないだろうか。

訪問先 Van Gogh Museum
所在地 Museumplein 6, 1071 DJ Amsterdam(オランダ)
訪問日 2023年 7月 27日(木)
意見交換参加者:ウリタ・ムアル(ゴッホ美術館シニア・リレーションシップ・マネージャー)、グンディ・ファン・ダイク(ゴッホ美術館エデュケーション部部長)

テキスト:堀内 奈穂子