Report 「空とカタツムリ」占部史人による島々の神話を元にしたワークショップ

2017年3月に、アーティストの占部 史人さんを迎え、子どもたちとのワークショップを赤羽の星美ホームにて行いました。南の島々に伝わる神話をもとに、子どもたちが自由にその世界を想像し、ドローイングと立体の彫刻作品を作り上げました。今回のワークショップでは20年近く星美ホームの子どもを見守るボランティアグループ「星の子キッズ」の大人の皆さんとの協働で行いました。

 

 インタビュー記事が掲載されました!

『「漂流物」が面白い。500年続く寺生まれの芸術家、占部史人が語る』CINRA.NET

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Photo by Yukiko Koshima

アーティスト、占部 史人さんのこれまでの取り組みと、子どもたちとのワークショップの様子が、オンラインカルチャーマガジン「CINRA.NET」のインタビューページで紹介されました。

 

インタビューはこちら。[CINRA.NETのウェブサイト] 2017.5.24 掲載


創世神話「空とカタツムリ」

500年続く、愛知の由緒ある仏教寺に生まれた占部 史人さん。僧侶の教育を受けた経験を持ちながら、現代アート作品も作っている珍しいバックグラウンドを持つアーティスト。 制作では、捨てられてしまうようなものや拾った素材、時間の経過したものなどを使い、観るひとが記憶や時間を旅するような彫刻作品やインスタレーションを手掛けています。

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占部 史人《蜜の流れる大地》展示風景 2016年 Courtesy of the artist and GALLERY SIDE2

 

今回、占部 史人さんとAITで企画したワークショップでは、南の島々に伝わる創世神話をもとに作品をつくる創作ワークショップを星美ホームの小学生の子どもたちと行いました。

海に沈んだ東南アジアの島や、世界のはじまりの物語、島々に古くから伝わる神話、遥か昔に海を渡って日本にやってきた人々と自分たちの繋がりを考えてみるなど、現代社会とは少し異なる物語を想像することで、子どもたちにより広い世界を感じてもらうきっかけになれば、と占部さんは話します。

神話を読んでいると、離れた土地でも似通った物語やモチーフが登場し、物語が海を渡って世界のあらゆる場所に広がっていったことが分かるといいます。

ワークショップのはじめに子どもたちは朗読を通して神話の世界を想像し、神話に登場するモチーフや世界観をドローイングと立体のオブジェで表現をしました。作品の素材には、古い洋書や、占部さん自身が色々な海岸を訪れて集めた漂流物など時間を経たものを使用しました。

今からずっと遠い昔、はるか南の海に大きな陸地があったと言われています。
その大陸にはたくさんの人々が暮らしていましたが、ある日洪水が来て深い海の底に沈んでしまいました。人々は船に乗ってかろうじて残された島々に移り住みました。

人々は神話によって自然の美しさや恐ろしさ、この世界の不思議、人間のあり方を語り継いできました。神話はやがて海を渡って台湾や韓国、日本にも伝わりました。今を生きる私たちにもつながっているのです。

今日は、神話の世界にいる動物や生き物たちをもういちどこの世界に蘇らせてみましょう。材料は、海を漂って砂浜に流れ着いたものや、拾い集めたもの、時を経たものなどを使いましょう。
それらの素材は、まるでこの広い世界を漂って来た旅人のようです。私たちも世界中を漂ってここにやってきた人々の末裔です。

素材のひとつひとつはとても小さなものですが、とても大きな世界を持っています。私たちひとりひとりと同じように。

それでは、今から神話の世界に入っていきましょう。

2017年3月12日 占部 史人

ワークショップを通じてできた子どもたちの作品の一部をご紹介します。

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アボリジニーの創生神話の世界を立体にした作品(小学校2年生の女の子) Photo by Yukiko Koshima


アーティストと子どもたちの新たな表現へ

dear Meプロジェクトでは、アーティストと子どもたちの出会いの経験や子どもたちの発想をもとに、アーティストやデザイナーが新たな形にして伝えていく試みを行っています。

今回の子どもたちとの出会いから、占部さんが神話の世界を想像したドローイングシリーズを新作として制作しました。なかでも蛸(たこ)は、神話においてはトリックスターのようにあらゆる場所をつなぐモチーフだといいます。

占部 史人《海のはじまり》 2017年

また、占部さんと子どもたちの作品の一部は、後日、オリジナルステッカーとしても登場しました。(子どもたち配布用/非売品)

 


 

ワークショップで使用した、子ども向けの神話の冊子は、占部さんとスタッフで手作りしたもの。沢山の神話の中から、占部さんと一緒に4つのお話を選びました。

その一つ、ワークショップのタイトルにも使用している「空とカタツムリ」は、パプア・ニューギニアに伝わる創世神話で、「空くん」と「カタツムリさん」が登場します。自分は誰よりも大きい存在で、世界に自分よりも大きいものなど何もないと信じていた空くんに、ぼくの方が大きいよ、と繊細なつのを持つ小さな1匹のカタツムリが話しかけます。その言葉に初めはびっくりした空くんでしたが、カタツムリのしょっている家(殻)の螺旋のしるしをみて、その特別な存在と力に改めて気づかされるお話。

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普段の日常とちょっと違った世界を想像してみることで、子どもたちはそれぞれにどんな発見に繋がったのでしょうか。発表の時には子どもたち自らマイクを持って、自分の作品の説明や、お互いの作品について感想を言い合いました。言葉では緊張して言えなかった子も、どんどん発言する子もいましたが、制作中の表情や作品からも見えて来たものがありました。

振り返りでは、いつも子どもたちに寄り添っている大人たちが、普段の子どもたちの様子からは気づかなかった、こんな面白い発想や、こんな表情をする子だったのか、と、その子の違う一面を発見できたという声もありました。

今後も、子どもたちやアーティスト、みんなで共に学ぶ時間を大切にしていきたいと思います。

テキスト: 藤井 理花

参加者・アーティストの声

とても素敵な一日になって、とても嬉しく思っています。
南方の神話という、普段あまり触れないようなお話を一生懸命読んでくれて、そしてできた作品は、はっとするようなものばかりで僕自身とても良い刺激になりました。
みんな人なつっこくてかわいくて、本当に素晴らしい時間でした。
神話という無限の広がりをもつ世界に触れた時間が、子どもたちの心のなかに少しでも残ってくれたらと願っています。

占部 史人さん

海まで行って廃材をあつめてきたり、準備から大変だったと思います。本当にありがとうございました。子どもたちもいろいろ性格もあって、話にちゃんと合わせて作品を作る子、話に関係なく廃材からのイメージでいろいろと作る子がいたり、面白かったです。

杉本 隆庸さん

本当に楽しく温かな時間でした。
どの特性の子にも合っていて、夢中になっている様子にジンときました。
子どものクリエイティヴィティには圧倒されます。しかも、子どもはその凄さは感じていないっていうのが面白いな、と思いました。
沢山褒めてもらって、認めてもらって、自己肯定感を上げていく要素が満載の素晴らしい企画でした。アートを知らない私たちも、アートの持つ不思議な力を感じる事ができました。

山北 千束さん
プロフィール
  • 占部 史人 うらべ ふみと
    1984年愛知県生まれ。愛知県立芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。仏教寺の子息として生まれ、僧侶としての教育を受けながら、現代美術の分野で作品を発表。近年の主な展覧会に「蜜の流れる大地」GALLERY SIDE2、東京、2016年)、「空いろの島」(あいちトリエンナーレ2013プレイベント、佐久島、2012年)、「占部史人ワークショップ作品展」(水戸芸術館現代美術ギャラリー、2012年)、グループ展に「赤い米の来た道」(James Cohan Gallery、上海、2014年)、「シャルジャ・ビエンナーレ11」(アラブ首長国連邦、2013年)などがある。シャルジャ・ビエンナーレ11 優秀作品賞受賞。