Lecture|べてるの実践から見るコミュニティと表現の可能性 – ケアの共同体と、弱さの情報公開 –

フィンランドの専門家とべてるのメンバー べてるまつり(2017年)の様子 Photo: Rika Fujii
フィンランドの専門家とべてるのメンバー べてるまつり(2017年)の様子 Photo: Rika Fujii

北海道浦河町にある、精神障害などを抱えた当事者と町民有志によって設立された地域活動拠点「浦河ベてるの家」。弱さや経験をひらくことで繋がりをつくってきた、浦河べてるの家の向谷地 生良さんから立ち上げのエピソードと当事者研究を取り入れた経緯、実践していく上での苦労や支援の在り方について伺い、共に考えます。

 

弱さを絆に。浦河べてるの家の取り組みから学ぶ

北海道浦河町にある、精神障害などを抱えた当事者と町民有志によって設立された地域活動拠点「浦河ベてるの家」。そこでは、精神疾患やうつ病を抱えた当事者が自らの経験専門家として研究し、生きる苦労とうまく付き合う方法を仲間と一緒に考え、みんなが共に支え合う活動「当事者研究」を推進しています。

国内外の先進的な活動を進める専門家とのシンポジウムや、統合失調症などを持つ当事者が主体的に表現をする幻覚&妄想大会など、弱さや経験をひらくことで繋がりをつくってきたべてるの実践は、親の精神疾患と子育てなど、社会に潜むさまざまな課題とこれからの「社会的養護」にも密接に関係しています。

そんな浦河べてるの家の設立にかかわった、ソーシャルワーカー向谷地 生良さんから当事者研究を取り入れた経緯と、実践していく上での苦労や支援の在り方について伺い、共に考えます。


MAD 2018 子どもとフクシとアートのラボ(4-9月)

アートと子どもと福祉を取り巻く新しい可能性について考えるコースの一環で行われるレクチャーシリーズ。レクチャーと実践を通し、さまざまな環境下にある子どもや若者が主体的に関わる場づくりや新しいアート・エデュケーションの可能性を考えます。AITが2016年に立ち上げたアーティストと子どもが協働するプロジェクト「dear Me」を出発点に、ゲスト講師に児童福祉の専門家や支援者、ソーシャルワーカー、小説家、アーティスト、研究者などを迎え、フクシとクリエイティヴの現場に対するさまざまな考え方、視点、ひいてはアートの可能性について議論していきます。また、実践では、オランダ王国大使館からの協力を得て、子どもや若者、障害のある方々を含む人々とアーティストが協働しアートを通じた先駆的な実践を行う海外の専門家を招き、受講生が子どもたちとアーティストを繋ぐ企画に取り組みます。

アートを見たい、触れたい、考えたいと希望する誰もがアクセス可能な「場」とは何か。一緒に考え、探していきます。

<特徴>
・福祉とアートをつなぐ活動に触れることができる 
・子どもたちや、社会的に弱いとされる立場にある人々を取り囲む環境を創造的に変革する専門家の声が聞ける
・アーティストやキュレーターの活動を通して、新しいアート・エデュケーションの可能性が発見できる
・海外の先駆的な活動を行う実践者との意見交換、ワークショップが体験できる

<こんな方にオススメ>
・福祉、社会、アートに関心がある方
・新たなアート・エデュケーション、学びの場を考えたい方
・子どもやアーティストと相互に想像力を刺激する活動に触れたい方
・ケアの在り方や、子どもとの寄り添い方のヒントを考えたい方 

 

 

プロフィール
  • 向谷地 生良(浦河べてるの家ソーシャルワーカー/北海道医療大学教授)
    1955年青森県生まれ。北星学園大学文学部社会福祉学科卒業。1978年、北海道浦河町の病院に精神科専属のソーシャルワーカーとして赴任。1984年、地域活動拠点「浦河べてるの家」を設立。理事、アドバイザーとして活動している。精神障害を持つ当事者が自らの症状を含めた生活上の出来事を研究・考察する「当事者研究」を提唱、メンバーと共に普及活動を行っている。主な著書に、『安心して絶望できる人生』(NHK出版、2006年)、『技法以前―べてるの家のつくりかた (シリーズ ケアをひらく)』(医学書院、2009年)、『精神障害と教会 教会が教会であるために』(いのちのことば社、2015年)などがある。http://bethel-net.jp
  • 社会福祉法人 浦河べてるの家 について
    1984年に設立された北海道浦河町にある精神障害等をかかえた当事者の地域活動拠点で、社会福祉法人浦河べてるの家、有限会社福祉ショップべてるなどの活動の総体である。そこで暮らす当事者達にとっては、生活共同体、働く場としての共同体、ケアの共同体という3つの性格を有している。
    https://bethel-net.jp