Column|子どもの学びの権利が守られる社会へ。ロサンゼルス HOLA – HEART OF LOS ANGELES 訪問

アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスにある、HOLA(Heart of Los Angeles)というNPO団体を訪問しました。HOLAは、かつては特に移民や貧困、犯罪の多かったエリアに拠点を置き、主に、教育を受けるチャンスが限られた家庭の子どもと青年層向けに、一般科目の学習サポートをはじめ、アートや音楽、自然、ロボット工学など、様々な活動を通じて子どもたちの支援をする団体。HOLAの一つの部門、ヴィジュアルアートによる学びを行うプロジェクトチーム スタッフにお話を聞きました。

HOLAの始まり

 HOLA(Heart of Los Angeles)は今から約27年前、「どんな環境にある子どもたちもみんな、自分の夢を諦めず、自由に学びたいことを学ぶ権利がある」というヴィジョンのもと、小さな拠点で数えるくらいの子どもたちと一緒に始まりました。

かつてはギャングが占領し、犯罪がはびこっていた街には、今では多くのアーティストや教師たち、卒業生やボランティアが溢れ、安全な場所になりました。現在までに、2300人を超える6歳から24歳の子どもと若者と協働し、4階建てのビルで活動をしています(訪問時)。HOLAで行う全ての授業やワークショップは無料で提供されています。


子どもたちが主体的に表現をする機会を創出する

今回、案内をしてくれたNara Hernandezさんは、HOLAで様々なアート・プログラムを担当しているスタッフ。かつては大きな美術館でも働いていたが、むしろそういう場ではない、正反対の場所で、アートに触れる機会の少ないひとたちに向けて、どんな環境に生まれた人にも人生を少しでも豊かに生きることができる権利があることをサポートする、という活動にやりがいを感じたそう。

Nara Hernandezさん

Hernandezさんが普段勤務する、子どもたちのためのアートスタジオ兼アートギャラリーは、本館の建物の通りを挟んだところにあります。天井は高く、大きなガラス張りの窓があり、明るくて開放的な空間。元はレストランだったという場所を、ほとんど改装せずに使用しているといいます。このスペースをメインに、全てが無料で参加できるワークショップを週にいくつも開催しています。

ヴィジュアルアーツ部門では、年間300人の6歳から18歳の子どもと若者を対象に、写真や陶芸、絵画、彫刻、イラスト、版画、グラフィックデザインやパブリックアートなど20種類以上 100回を超える無料のアートクラスが開催されています。そのほか、HOLAの外へ出て、子どもや若者たちが一緒に美術館やアート機関、アーティストのスタジオやカルチャースポットへ訪問するフィールドトリップのプログラムも多数行なっています。

訪問した際にスペースに飾られていた展示は、絶滅危惧種の動植物を子どもたちがリサーチして、それを絵や彫刻で表現するワークショップでできた作品たち。

また、数日前に出来上がったという、百貨店BARNEYS NEW YORK(バーニーズ・ニューヨーク)のウィンドウディスプレイ用のパネルを子どもたちとデザイナーが制作した大きなパネル作品もありました。

2階に上がると、スタッフのオフィススペースと大きな丸いテーブルがある、だれでも使える図書室があり、子どもがデザインしたカーペットを実際に製品化したという、ユニークなカーペットが敷かれていました。地下には、シルクスクリーンを刷るスペースと写真現像用の暗室がありました。

隣接するオフィスとレクチャースペースの建物の前には、野菜をつくる庭や、野外レクチャーができるスペースがあり、中に入ると、学習のための教室に加え、陶芸スタジオ、子どもたちが放課後に来てくつろげる遊び場のようなラウンジ、ロボットを研究するための部屋など、個々の関心に合わせて使える様々な設備があります。ほかにも、パブリックプログラムとして、子どもたちと一緒に街なかに木を植えたり、音楽の活動では、LAフィルのオーケストラとのコラボレーションも行っています。

また、スタッフの年齢層も幅広く、カジュアルな雰囲気の中、楽しそうに働いている様子も印象的でした。


 ユースとアーティストのコラボレーションプログラム

SERIOUSLY? from HOLA Visual Arts on Vimeo.

HOLAのヴィジュアルアート部門では、「Meet the Artist」というワークショッププログラムがあり、現代美術のアーティストとの交流や、海外からのアーティストを受け入れるアーティスト・イン・レジデンスプログラムを通じて、子どもたちとアーティストが出会い、協働するプログラムも積極的に行なっています。

「Meet the Artist」の成果のひとつ、『SERIOUSLY? 』は、HOLAに通うミドルスクールの20人の生徒たち(日本でいう中学生)によって2017年に制作されたパフォーマンス作品。当時HOLAのレジデンス・プログラムで滞在をしていたフランスのアーティストScoli Acosta とAlison O’Daniel、 MacArthur Parkとともに、生徒たち自ら脚本を書き、撮影ほか全てに関わり制作されたもの。

生徒たちのアイディアを形にするために、コスチューム指導、ポスター制作、シネマトグラフィーのプロフェッショナル、そして、編集者や作曲家らが加わり、生徒たちと一緒に構想を練ってつくられました。生徒たちのアイディアを、生徒同士で深めたり、周りの大人たちが全力でサポートします。

そのほか、地域のアーティストとも積極的に関わり、街や自然、スタジオなどさまざまな場所を活用し、HOLAの生徒たちの表現を引き出すプログラムを多数行っています。
AITとバッカーズ・ファンデーションのレジデンス・プログラムで2014年に日本に滞在したアーティスト、アルバート・サムレス(Albert Samreth) も出身のアメリカ・ロサンゼルスに帰国後、HOLAローカルアーティストの招待プログラムにゲストとして選ばれ、HOLAのユースたちと活動した経験があります。

どんな環境にあっても、子どもたちの学ぶ権利を尊重し、学びのチャンスを狭めない、そんな想いから、個人や団体、企業の多くの人のサポートで、子どもや若者たちの自主的な学びと、アートやデザインをつうじたオリジナルの表現を引き出す活動を長年続けているHOLA。国や文化、背景は違っても、困難や難しい社会課題を、アートの持つ柔軟なアプローチでポジティヴに転換し得ることがあることを改めて実感する機会になりました。

2019年、HOLAの新たな施設がオープンし、ヴィジュアルアートの活動もさらに拡大しているそう。今後の、HOLAの表現と学びのプロジェクトにも引き続き注目していきたいと思います。
https://www.heartofla.org/

テキスト:藤井 理花