Report KIDSDOOR × dear Me 「英語でアーティストの思考に触れよう!」

kids_door1 中学生たちに作品の説明をする、アーティストのサラ・オウハッドゥ Photo by AIT
2018年2月〜3月にかけて2回、キッズドアとdear Meのコラボレーション企画として、子どもたちが英語でアートの思考に触れるイベントを開催しました。これは、キッズドアが取り組む学習支援の新たな試みとして始まった、遊びやゲームなどのアクティビティを通して小学生から高校生が英語を学ぶ「English Drive」に参加する中高生を対象にしたものです。AITのレジデンス・アーティストのサラ・オウハッドゥ(フランス)とキュレーターのナタリア・ヴァレンシア(コロンビア)がゲストとして関わり、15名程の生徒が参加しました。
キッズドアは2007年より活動する、日本国内の子どもたちを支援するNPO団体。経済的に難しさを抱える家庭やひとり親家庭、また、児童養護施設や被災地で暮らす子どもたちなど、さまざまな困難な状態にある子どもたちが夢をあきらめず、将来に希望を持って活躍できる社会になるように、企業や行政、法人、個人、学生などと提携しながら幅広く活動しています。http://www.kidsdoor.net

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英語で海外のアーティストやキュレーターの思考に触れよう!

はじめに、AITが取り組むアートを通じた活動について、「レジデンス・アーティスト」や「キュレーター」という、普段あまり馴染みのないと思われる単語も交えながら英語と日本語で紹介しました。サラとナタリアが自己紹介をした後、お互いの顔が見えるようにテーブルを囲んで座り、生徒たち一人ひとりが英語で簡単な自己紹介を行いました。その後は、いよいよディスカッションです。サラとナタリアは、それぞれの出身国やこれまでの取り組み、そしてアート作品についてなど、スライドを見せながら説明をしました。 アーティストのサラは、自分のアートや工芸への関心の始まりとして、自身のルーツであるモロッコの家族のことや生い立ちを話しました。父親が営んでいたモロッコの伝統工芸の絨毯屋のこと、家の隣で羊を沢山飼っていたことなどを、生徒たちに写真を見せながら英語で紹介しました。サラは、モロッコとアラブとの関係性から、アラブ文化が入る前のモロッコの部族が古代から使ってきた文字(記号)やその成り立ちをリサーチしながら作品を制作しています。

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アラブ語の書籍を溶かして漉いた紙に、アラブ文化の入る前の部族が使った文字を描いた作品

今回、日本滞在中に行ったリサーチの一環として、青森県津軽地方の伝統工芸である「こぎん刺し」と呼ばれる刺し子の技法についても紹介しました。青森で入手したこぎん刺しを実際に見せながら、東北でのできごとや、日本の織物とモロッコの織物の共通点について話しました。どちらも冬の厳しい寒さに耐えうるために保温と補強を兼ねて、麻布でできた野良着の隙間を縫って刺繍をするようになったという、土地の風土に合わせた生活の知恵からうまれたもの。国や文化背景は違っても、昔から物を大切にしながら生活の工夫をしてきた工芸品の成り立ちには、通じる部分が多くあると言います。

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左:青森のこぎん刺し /右:青森のリサーチから 藍染の工房の様子

参加していた生徒のうち、青森に行ったことのある人はおらず、「こぎん刺し」という言葉も初めて聞くという人がほとんどでした。そうしたこともあってか、こぎん刺しを興味深そうに手にとる姿も見られました。次に、サラが用意した様々なこぎん刺しの模様の中にあるモチーフを当てるゲームを行いました。よく見てみると、模様の中に単純化された動物や虫、植物など、色々なものが隠されています。初めは緊張していたようにも見えた生徒たちでしたが、ゲームが進むにつれて隣にいるボランティアスタッフに相談したり、分からない英単語を聞きながらも楽しそうに参加していました。 Natalia and students 一方、キュレーターであるナタリアは、母国コロンビアの紹介と、コロンビアの著名な現代美術のアーティストの作品画像を見せながらディスカッションを進めていきました。 参加した生徒のうち美術館はたまに訪れるという人もいれば、ほとんど行くことのないという人もいて、見慣れない作品の中には、やや刺激的なイメージもあったようです。ディスカッションの中では作品の第一印象や内容について意見を出し合うほか、アーティストがなぜそのような表現をしようと思ったのか、そしてコロンビアが持つ植民地としての歴史やグローバル化、美術史におけるアーティストの表現など、様々なトピックスが出て、英語で高校生たちに問いかけました。 特に、ナタリアが紹介した現代アート作品に少し驚いた様子の生徒たちでしたが、現代アートが持つ批評性やメッセージ性のある表現については、「ありだと思う。結構好き。」と答える人や、「よくわからない。」など、色々な意見がありました。 思いを英語で伝えることに、初めは恥ずかしそうにしていましたが、シュルレアリスムの作品と現代美術の作品を並べ、どちらが「好き」か、どこが「好きじゃないか」を見つけてもらったり、「それはどうしてだと思う?」と問いかけ、少しずつ作品との距離を縮めていきました。今回のアクティビティでは言葉に表すことがまだ難しい、と言う生徒もいれば、今回をきっかけにもっと現代美術を知りたい、と言う生徒もいました。 テキスト:安永 沙羅

 

参加者の声参加者の声

現代アートにはあまり馴染みがないと言っていた生徒たちと、自分の活動や作品の話をするのはとても良いと思います。いつもはアートの文脈の中で話していることを、全く違う角度から話すという私自身の学びの場にもなりました。

サラ・オウハッドゥ(アーティスト)

今回の活動を終え、最初は生徒たちがそれまで見たことがないものや現代アートの表現に戸惑っていたようにも見えましたが、アーティストが常に作品と生徒たちの身近なことを繋げて問いかけをしたことで、ほんの少し親近感を感じてもらえたかもしれません。教科書通りの学びとは違い、目の前にある「表現」について、考える、話し合う、触れる、発言するという、シンプルながらルールにとらわれないアプローチでトピックスや英語に触れる良い機会になったのではと思います。このような場を持つことが、子どもたちの周りの様々なところで今後も多く行われていくと良いなと感じました。
今回の活動を終え、最初は生徒たちがそれまで見たことがないものや現代アートの表現に戸惑っていたようにも見えましたが、アーティストが常に作品と生徒たちの身近なことを繋げて問いかけをしたことで、ほんの少し親近感を感じてもらえたかもしれません。教科書通りの学びとは違い、目の前にある「表現」について、考える、話し合う、触れる、発言するという、シンプルながらルールにとらわれないアプローチでトピックスや英語に触れる良い機会になったのではと思います。このような場を持つことが、子どもたちの周りの様々なところで今後も多く行われていくと良いなと感じました。

スタッフの声スタッフの声
プロフィール
  • ナタリア・ヴァレンシア / Natalia Valencia ナタリア・ヴァレンシア / Natalia Valencia
    1984年コロンビア・ボゴタ生まれ、メキシコシティ・メキシコ在住。インディペンデント・キュレーターとして活動するナタリア・ヴァレンシアは、これまでコロンビアのメデジン近代美術館、モロッコのラバトにあるアート・スペースL'appartement 22、フランスのボルドー現代美術館、パリのパレ・ド・トーキョー、ボゴタのボリバル邸博物館、グアテマラのウルトラバイオレットプロジェクト(Proyectos Ultravioleta)などの機関と展覧会を通じた恊働を行っている。
  • サラ・オウハッドウ / Sara Ouhaddouサラ・オウハッドウ / Sara Ouhaddou
    1986年フランス・パリ生まれ、在住。サラ・オウハッドウは、モロッコの伝統的な家系に生まれる。パリ装飾美術学校卒。モロッコとフランス両国の文化背景を持ち、そうしたアイデンティティが、伝統の変容への関心と文化と人類学の継続的な対話を主題とする自身の創作活動に繋がっている。モロッコに伝わる古くからの文化芸術と現代アートの関係性を探り、現代の視点から忘れ去られる文化の新たな位置づけを試みている。
  • (日本語) NPO法人キッズドア
    (日本語) キッズドアは2007年より活動する、日本国内の子どもたちを支援するNPO団体。経済的に難しさを抱える家庭やひとり親家庭、また、児童養護施設や被災地で暮らす子どもたちなど、さまざまな困難な状態にある子どもたちが夢をあきらめず、将来に希望を持って活躍できる社会になるように、企業や行政、法人、個人、学生などと提携しながら幅広く活動しています。http://www.kidsdoor.net