Report Online Art Workshop|Report on ‘Science and Life Classroom’ The theme is ‘Fragrance’

(日本語) 2021年10月に、アーティストの三原聡一郎さんをゲストに招き、オンライン・ワークショップ「科学と生活の教室」の2回目を実施しました。本ワークショップは、苔や植物など、自然の中にある素材とLEDライトや小型の機器などが入った「実験キット」を使い、アーティストと子どもたちが科学や生活の中にある色々な発見を楽しむアートの学びの講座です。前回の第1回目に続き、子どもたちの豊かな発見や自発的な学び、アーティストとの想像力溢れる対話などについて、レポートをお届けします。

*2021年に実施した本ワークショップは、キリン福祉財団の助成、および、株式会社資生堂 2021年度カメリアファンド花椿基金による寄付で開催されました。

(日本語)

ワークショップのはじめに

ワークショップのゲスト講師としてお招きした三原聡一郎さんは、自然の中にあるさまざまな素材と自分で発明した機械や装置を組み合わせたアート作品を制作しています。子どもたちに大好評だった第1回目のワークショップでは、実験キットを使いながら光や水、苔(こけ)に注目したワークショップを行いました。ミニレポート

第2回目は、「香り(かおり)」をテーマに実施しました。多くの人が感じているけれど目には見えない「香り」は、まさに現在、三原さんが新しく作品に取り入れようと研究しているテーマです。
今回も日本各地から、アートや科学に関心のある小学生たちや前回のリピーターも参加してくれました。
子どもたちの手元には、あらかじめ届けた実験キットの四角い箱が置かれています。この実験キットには三原さんやdear Meが選んで詰め込んだ、さまざまな素材が入っています。


「香り」にまつわる世界を知ろう

冒頭の三原さんの自己紹介では、アーティストとして、誰も見たことがないものを本気で作ることへの想いや視点、そして、なぜいま「匂い」に関心があるのかについてお話ししてくれました。コロナ禍の生活の中では、私たちは季節に関係なく日常的にマスクをしています。そんな中、三原さんはあらためて生活の中での匂いに着目し、人のいないところでマスクを外して深呼吸した時の感覚や、その土地ならではの匂いに関心を持ちます。

これまで、三原さんは世界中のあらゆる場所に旅をしてきました。コロナ禍以前は、さまざまな国を訪れ現地の人の暮らしをリサーチしたり、同じ分野で活動するアーティストや研究者と一緒に実験をしたり、展示をしながら移動をしていたそうです。出会った人たちのなかには、フィンランドのラップランド地方に暮らすトナカイの遊牧民サーミ族や、アマゾンの先住民族の家族など、色々な文化背景を持つ人たちと経験をともにしてきました。

そんなエピソードを映像と写真で紹介しながら、その国の香りを少しみんなで想像しました。珍しい風景の写真と旅先でのお話に、子どもたちからは、こんなコメントが即座に飛び出しました。

「や ば い」
「面白い!」


香りと関係の深い、空気の流れを感じてみよう

ワークショップ中盤では、実験キットを使いながら、香りと空気の関係について想像しました。
実験キットの中にあった風を感じるための「ヤジロベー」を取り出して、パーツを組み合わせてセットすると、自分の部屋の、かすかな空気の流れを感じることができます。


匂いを感じるメカニズムと、動物たちの嗅覚

続いて、人は実際に、どのように匂いを感じているのかというお話がありました。ヒトと動物では、匂いを感じる感覚が違います。三原さんによると、人と犬の嗅覚は倍近く違い、なんと象は、自分を襲う人間と、そうでない人間を匂いで見分けることもできるのだそうです。

まだまだ解明されていない、動物たちの秘めた能力に対して、子どもから、象の嗅覚についてこんな感想も飛び出しました。

「けいさつぞうじゃん」

(嗅覚の仕組みをみて)「フクザッツ」


いろいろな匂いを感じてみよう

実験では他にも、さまざまなハーブ、古い本のページ、紅茶とマドレーヌ、オーデコロンや香水などを嗅いでその違いを発見しました。

三原さん特製のUSB香炉があたたまったところで、セージやローズマリー、バジルなどのハーブの葉をそっと置いたり、指で葉をちぎってのせたりすることで、香りの強さの違いに気づきます。

「スギは甘いにおいがする」

「フランキンセンス知ってる」

「セージがすきです」

続いて、実験の途中に、三原さんからマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』や、ニュートンの本などの一説を紹介しながら、無意識に感じている香りと記憶のお話を、子どもたちに紹介しました。そして、キットに入った古い本の1ページを嗅ぎながら、香りと記憶がどのように結びついているかお話ししました。三原さんは「晴れた日の学校の、木の廊下を思いだす」そうです。

「(古い本の1ページは)古代の本のにおいがした」

紅茶とマドレーヌは、子どもたちにとって待ちに待ったおやつの時間!プルーストの小説の描写にあるように、マドレーヌを紅茶に浸してその香りの違いに気づいたり、味わいながら感想を共有しました。ハーブや香水への関心が高まった子もいたようです。

「お茶の匂いがすごい!」

「(マドレーヌを食べて)うっっっっっっっっっまい!」

「美味しい!」

「(オーデコロンは)ママがお父さんのにおいがするって言っていた」 

「うちのお父さんこんなにいい匂いしない」

「ニオイの世界 面白そう」

「ニュートン(の本)たくさんもってます」

実験を終えて、子どもたちが一番楽しんでいたことの感想を保護者のみなさんから送っていただきました、少しだけ共有します。

「お子さんが一番楽しんでいたこと、印象に残ったことはなんですか?」

全体を通して、いろんなものの匂いを嗅いだことが楽しかった。たくさんの種類を知って、比べることができたから。匂いのリセットの仕方のお話も、面白かった。

クッキー(マフィン)を紅茶にひたして食べたこと。そのような食べ方を初めて体験したから。


●香炉でセージの香りを楽しんだこと。実際に自分で作業をしてその結果を感じられたことが楽しかったようです。

●「すべて!」と言われました!ずっとキットの中身を見ていたりワクワクした様子が見ていて微笑ましく嬉しかったです。

キットの内容と三原さんのお話がとても楽しかったようです。 USBの温かくなるものはこれからも大事にする、何に使えるだろう。と色々考えているようです。 ワークショップ後、アメリカにいるグランパグランマに近況を聞かれ、息子がワークショップに参加したことやもらったキットを紹介し、シャネルのNo5の話をしていました。 グランマがNo5を若いころフランスでグランパに買ってもらった、伝説の香水よね。と、思い出を話してくれ、”香りと思い出や記憶の深さ”三原さんがおっしゃってた言葉を思い出して、子どもも大人もとても楽しい時間だったなと実感しました。

実験などをしながら、チャットを使ってトークをすること。 手元で実験キットを組み立てたり、色々な香りを嗅いだり、マドレーヌをお茶に浸して食べたりしながら、自分の意見を言ったり、他の子の反応が見れることが楽しかったようです。

● USBをパソコンにさして、香りを楽しめました。ほんとうに良い香りでした。

セイジの葉を粉にして置いたものから、香りが広がった時にとても興奮して声を出していたように思います。


動物の嗅覚の比較や、これまで興味深く観察したことのなかった香りという物をテーマに作業をできたことが楽しかった。

全体のお話しをずっと教えてくれたり、何かに活かしたりできないかなど、とても興味深かったのだと思います。また次回あったら是非参加したいと言っていたので、楽しみにしています。

 色々な香りがたつと、飼っている猫が近づいてくるので、びっくりしていました。

今後もdearMeでは、アートの思考や表現を通して身近な世界を発見したり、モヤモヤしたり、自分の関心と社会をつなげる学びのワークショップを不定期で開催します。

子どもだけではなく大人も一緒に、自発的な学びや「もっと知りたい!」をアートを通して考えていきます。

どうぞお楽しみに!

Workshop For Children アーティストと考える科学と生活の教室:三原聡一郎(実験とお話しの回)vol.2

[概要]
講師:三原聡一郎(アーティスト)

モデレーター:堀内奈穂子(AIT、dear Me ディレクター)
定員:15名 対象:小学生3年生〜6年生

*この講座は、アートの力で環境や障がいに負けない心を育む、子どもたちの支援プロジェクトの一環として、「キリン福祉財団 キリン・地域のちから応援事業」の助成、および「2021年度 資生堂カメリアファンド花椿基金」による寄付で開催されました。

(日本語) 参加者の声

(日本語) 匂いを感じる器官の詳しい解説や体験キットを使ったさまざまな香りの体験、温めることにより香りが立つこと、記憶と香りの関係など、子どもたちの人生にとって何かしらの影響を与えられたのではないかと感じました。

(日本語) 参加した子どもの保護者

(日本語) キットを受け取った瞬間から、親子共々、楽しみにしていました。「香り」にも、様々なものがあること、動物の嗅覚についてなど、日常の生活では知る機会が少ないことについて、多岐に渡り、知見を広められました。「香り」について、いろんな角度から、考えるきっかけを得られました。

(日本語) 参加した子どもの保護者

(日本語) 実際に体験できるワークが面白かったです。

(日本語) 参加した子どもの保護者

(日本語) お話やスライドなどとても興味深く楽しませては頂きましたが、ワークショップとしてはもう少し子どもが実際に作業をする時間を作って頂けたら、より楽しめたかと思います。

(日本語) 参加した子どもの保護者

(日本語) 子どもはもちろん親(動きながらでしたが)も楽しめる内容で大変嬉しく思いました。

(日本語) 参加した子どもの保護者

(日本語) 送られてきた箱のキットが宝箱のようで、いろんな物が入っていて開催前からとても楽しみな気持ちが高まりました。ワークショップ中も、話を聞く・意見をシェアする・キットを使う・匂いを感じるなど楽しめる要素が多かったですが、三原さんとAITの皆様の進行でゆったりした時間を過ごすことができました。

(日本語) 参加した子どもの保護者

(日本語) 新しいアイデアを知ったり、新しい体験が出来て、とても楽しかったです。
また、コロナが続いた状況でしたが、オンラインで色んな子に出会えて良かったです。

(日本語) 参加した子どもの保護者

(日本語) 子どもが興味を持って聞いていたこと。マドレーヌを紅茶につけていいものか悩んだ末に、つけてみて、食べた時のこの上ない表情が全てを表しているようでした。子どもが長い時間集中しているのも内容が良かったことの結果なのではと思います。

(日本語) 参加した子どもの保護者

(日本語) キットに温かみがあり、素敵な香りをはじめ心に刻まれるそんな機会でした。
オンラインで五感を刺激する取り組みを実現されていることが素晴らしいと思いました。

(日本語) (公財)キリン福祉財団 常務理事・事務局長 大島宏之
(日本語) プロフィール
  • (日本語) 三原聡一郎(アーティスト)
    (日本語) 1980年東京都生まれ、京都府在住。情報科学芸術大学院大学 [IAMAS]修了(2006年)。音、泡、放射線、虹、微生物、苔、気流、電子、水など多様な素材をモチーフに、自然現象とメディアテクノロジーを融合させた実践を行う。
    http://mhrs.jp/
  • (日本語) dear Meオンライン講座について
    (日本語) dear Me プロジェクトはこれまで、時に鋭く社会を眺めるアートの思考に子どもたちが触れることで、複雑な世界を自分なりにとらえて表現するワークショップを実施したり、子どもを取り巻く社会課題を大人が考え共に考察することで、アートと福祉の協働を目指す場をつくってきました。
    今、パンデミックによる見えないモノへの脅威や価値観の揺らぎによって心の健康が揺さぶられる中、dear Meでは、アートの体験がどのように「メンタルヘルス」や時に「ケア」と結びつくか考えたいと思っています。dear Meオンライン・アート講座も開講中。

    *dear Meでは、子どもたちとのプログラムを実施するにあたり、寄付をはじめとするサポートを募っています。一緒に子どもたちとの学びを育んでみたい方はぜひご協力ください。